この手を離さないように…

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ホッとしたような 少し寂しいような… って、その気持ちはダメだよね。 静かになり真っ暗になった画面を見つめ これで良かったんだ、と自分に言い聞かせ スマホをギュッと握りしめた途端。 「え、嘘…」 また、だ。 パッと明るくなった画面に映るは然さんの名前。 さすがに間髪入れずに連続2回の着信は 人のモラルとして無視出来なくなった私は… 「…はい」 応答してしまった。 『由凪さん!?』 入ってきた第一声は 焦ったような、切羽詰まっているような必死さ。 『まだ乗ってないッ!?  駅にいるッ!?』 もしかして走っているのだろうか。 言葉の端に時折、息切れが聞こえてくる。 「え、う、うん…」 『良かったッ!  もう少し待ってッ』 「待ってって…  でももう時間…」 会話をしていると同時に 新幹線がホームに…私の並ぶ列の前に停車してしまった。 ドアが開き続々と乗り込む人々。 電話を切るワケにはいかなくなってしまった私は 後方に先を譲り、列を外れるしかない。  
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