この手を離さないように…

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まさか然さんが近くにいる!? スマホを耳に当てたまま辺りをぐるりと見渡すと 改札口側のエスカレーターから降りてこちらに歩いてくる彼の姿を見つけた。 たぶん然さんも私に気が付いている。 スマホを耳に当てながら まっすぐ向かってくる彼と 確かに視線が重なっているから――― 新幹線が出発してしまう。 もうタイムオーバーになる。 私は発車しようとする新幹線が気になってしまい そちらに目線を移してしまうと… 「由凪さんッ!」 然さんに名前を呼ばれて また意識を引き戻される。 着実に彼との距離が縮まり 気が付けば長ベンチの端と端の位置まで近付いていた。 お互いスマホを耳から離し 然さんは私に直接、言葉を掛ける。 「俺、やっぱり由凪さんが好きだ」 「然さん…」 彼の告白を聞いたと同じ時 新幹線は私を残して発車してしまった。 時間切れ…だったはずなのに 行ってしまった先を私は目で追う事もなく 然さんの目を見つめたまま 瞬きすら出来ないほど吸い込まれている自分がいる。  
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