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事の発端は。
私の名は綺咲 由凪
まるで恋愛漫画に登場するような洒落た名前と
読めない漢字で30年も生きているが
その名には似つかわしくないほど、地味だ。
肩まで伸ばした真っ黒な髪を束ねて1つに縛り
分厚い眼鏡と、目に入りそうなほど伸びた前髪。
そのおかげで目元のメイクはマスカラだけ。
口紅だのグロスだの塗らないし
チークもつけないから血色が悪く
『あれ?今日も具合悪いの?』などと聞かれる事は、しばしば。
恋愛に関しては眼中の範囲にもない。
だから結婚は疎か「彼氏とは?」がもう何年も。
大学を卒業してから
同じ会社に10年近く働いている、いわゆる”お局組”
誰よりも1番に会社に出社し
清掃員の如く隅々まで綺麗にしてから仕事を開始。
今日もそうやって1日が始まろうとしていた。
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