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が、少し進むとなんだか訳のわからない胸騒ぎを感じ始めたことに気づいた。
一歩、また一歩と歩みを進めていくにつれ、その何だかわけのわからない胸騒ぎは徐々に大きくなっていき、気がつくと僕の足は慣れ親しんだ我が家とは真逆の方向をむいていた。
その足音にすぐ気づいた彼女は、一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにいつものいたずらな笑顔を僕に向けた。
「どうしたの?もしかして愛の告白?」
彼女の上等文句はいつものことだが、今はなんだかそんなことに構っていられない複雑な感情が行ったり来たりしている。
だが、この気持ちが何なんかは僕にもわからない。
「いや、暗くなっちゃたし、送っていくよ」
咄嗟にそう口が動いた。
いや、というより訳のわからない巨大な塊をその言葉と共に呼吸のように吐き出したといった方が正しいのかもしれない。
確かに、この辺りは街灯も人通りも少なく、女の子が夜道を1人で歩くには少し危険な感じはしなくもない。
だけど、今まで彼女を家まで送ったことなどない僕から、思いもよらない言葉を耳にした彼女は、一瞬だけキョトンとした表情をしたが、すぐに今度は爽やかな笑顔を僕に向けた。
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