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次の日、出社すると真木の姿はなかった。 と、デスクに達雄が紙の束を持ちながら寄ってきた。 「真木から伝言。搬入ないから、一日配送しろ、だと。今日は特に忙しくねぇって言ったんだけど」 ーーーどうやらまだ許していないらしい。 「そうですか。雑用でも何でもいいんで使ってください」 「だら病院までオムツ配達してもらうかな」 渡された紙オムツの伝票をチェックしてると、マネージャーである安藤が寄ってきた。 「何?喧嘩でもしたんか?」 「え?あー」 頭を掻く。 「俺、真木さんをキレさせちゃったんです」 「は?」 向かいのデスクで聞いていた金原が身を乗り出す。 「真木が?あいつ怒ったりしないだろー。たまに面倒になると愛想ゼロになるけど」 「いや、車でグローブボックス思い切り蹴りあげてました」 「……へー!」 二人声を合わせて目を丸くしている。 「……すげーなお前」 「すみません」 「……いやいやいやいや!ねえ、安藤さん!」 金原が安藤の顔を見る。安藤も黙って頷く。 「ーー俺、真木さんのサポートで採用してもらったのに。このままじゃクビですかね」 「それはないだろ。何したか知らないけど、少ししたら直るって。あいつ根に持つタイプじゃないし」 安藤が笑いながら頭を掴んでくる。 「期待してるぞ、いろんな意味で!」 そう言うと二人は示し合わせたように、ニヤニヤしながら喫煙所に消えていった。
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