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エレベーターに乗ると、閉ボタンを押したまま、三咲が固まった。
「三咲さん?1階押さないと」
「あ、うん、そうだよね」
慌てて押す。
ウインとエレベーターが起動して動き出す。
「ーーあのね、九石君」
三咲が小刻みに頷きながら話し出した。
「そういうこと、だから」
「……え?あ、すみません。どういうことですか?」
「だから、あの二人、そういうことだから!」
「……え」
ーーーそういうこと?
ーーーあの二人が?
ーーーどう言うこと?
ーーーあの二人が………?
「ーーーはぁ?!」
思わず出た大きい声に、三咲が黙る。
「あの二人が?だって真木さん、中身は男だし。課長だって既婚者ですよね?」
「うん。そう。だけど、空気を読んじゃうと、そーなるんだよね」
ーーーは?どんな空気だよ。
九石は眉間に皺を寄せた。
「でも詮索しない。責めたりなんて、絶対しない。だって私、二人とも好きだし!二人の関係性も、好きだし!」
「ーーーなんだそれ……」
「ーーだから、九石君も……あっ!」
考える前に体が動いていた。
三咲を押し退け、僅かに開いたドアをこじ開けるようにして飛び出した。
「ちょっと!九石君?!」
階段をかけ上がる。
ーーー何だそれ!何だよそれ!
ーーー真木さん、あんた、男だろ!
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