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◆◆◆◆◆
正面玄関を抜けると、外は細かい雪が降っていた。寒波の影響か、市立病院の外壁に跳ね返った強い風で、雪の渦ができている。
「さみーな」
真木が背中を丸めながら先導して歩き始める。
続こうとした瞬間、九石が尻餅をついた。
「おい、どうした」
フードを両手で押さえた真木が振り返る。
「滑ったか?」
「……すみません。腰が抜けたみたいです」
やっとのことで答える。
「はあ?笑わせんな」
真木は寒さで鼻を赤くしながらケラケラと笑う。
「しゃーない。車持ってきてやっから待っとれ」
言いながら舞い上がる雪の渦に消えていった。
ーーーなんで平気なんだよ。
人が死にそうになってるの目の当たりにして。
あんた、人の命を救ったんだよ。
もっと恐怖に震えたり、助けた喜びにもっと興奮してもいいんじゃないのか?
なんで、そんないつも通りの感じで、何もなかったかのようにできるんだよ。
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