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Guardian
私には小さい1人娘がいる。名前はヨーン。
血の繋がりがあるかは正直分からない。
妻が亡くなった日に駐車場に突然現れた娘は、戸籍のない身元不明者だった。しかし、容姿は私そっくりで驚いた。
奇妙な出会い方をした私達は紆余曲折あったが、今は絆も芽生えて本当の親子になった。
□
[迷子のご案内。青い帽子を被った6歳の…。]
「まずい…見つからない。」
ヨーンと一緒に買い物に来たが、少し目を離したら逸れてしまった。
店内を何周もしているが、すれ違っているのか全く見つからない。休日ということもあり、広い店内は人々で溢れかえっている。
それに先程から迷子アナウンスが流れているので、他の家族も子供が迷子になっているようだ。
しかし、ヨーンの名前が流れてこない。未だに店内を彷徨っているのかもしれない。
1人で心細いんじゃないか?泣いているかもしれない。
それとも変質者に誘拐された…?
どんどん不安が募っていき、よくない方向へ考えてしまう。視界は涙で滲んでくる。
すると、レジ台付近に小さな女の子が店員と話しているのが見えた。
急いで駆け寄ると、女の子はヨーンだった。
無事だったことに安堵して本格的に泣きそうになる。近づくと会話が聞こえてきた。
「え、えーと、迷子でいいのかな?」
『はい、業務中申し訳ありません。どうやら私、迷子になったみたいでアナウンス掛けてもらうことは可能ですか?』
戸惑う店員の前で、冷静に自分が迷子になっていることを伝える娘がいた。
泣いていたり不安そうな様子もなく、無表情で淡々と状況を伝えている姿は予想の斜め上だった。
『もしくは、迷子センターみたいな場所に…。』
「すいません!私の娘です!お騒がせてしてしまい申し訳ありません!」
「あっ!この子のお父さんですか!?良かったね!来てくれてたよ!」
私に気がついたヨーンは、店員に礼を告げると此方に駆け寄ってきた。
親子2人で礼を告げると、店員も安心したような顔で見送ってくれた。
「どこ行ってたんだ?怪我はしてない?平気か?」
『大丈夫。お父さん、ごめんね。』
私を見つめてくる表情は、先程より柔らかいに見えた。やはり、1人で不安だったのだろう。
「父さんも目を離してごめん。気になるものがあったら一緒に行くから教えて。お互い側を離れないようにしよう。」
『うん。』
「ヨーンが無事で良かった。よし、手を繋ごう。」
私が手を差し出すと、ヨーンが応えるように握ってきた。この子が無事で本当によかった。
それにしても…子供と思えないくらい冷静な喋り方だったな。
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