AI導入

2/3

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 数日後、美晴が大量に送りつけたメールのおかげか、彼女が働く店舗にAIが導入されることになった。  名前は山田アイ子。テレビで見たAIと違い、黒髪ショートで見た目は40代。程よく品のある、優しそうなおば様だ。 (どうせならイケメンか若くて可愛い女の子がよかったなぁ。そっちのが目の保養になるし)  予想より年増なのは少し残念だったが、これで客対応をせずに済むと思えばそれだけで気が楽になる。  11時過ぎ、昼前とあって少し混む時間。美晴が特売の人参を売り場に持っていく最中、60代の小太りの女性が声をかけてきた。 「ねぇちょっと!」  女性は美晴のカートを掴んで呼び止める。非常識な振る舞いに、内心舌打ちする。 「特売のアジってどこにあるの? お魚売り場ざーっと見たのに見当たらないんだけど!」 (そんなの青果担当の私が知るわけねーだろボケ)  内心毒づきながら近くに鮮魚担当者がいないか見回していると、アイ子がにこやかに声をかけてきた。 「いらっしゃいませ、お客様。何かお探しでしょうか?」 「あ? あぁ、アジってどこなの?」 「本日特売のアジですね。こちらへ」  アイ子は女性を鮮魚売り場に案内し始めた。美晴は急いで売り場へ行き、人参を並べる。  バックヤードへ戻る際、アイ子と女性の後ろを通ると、彼女は女性にアジを使ったレシピを教えていた。 「ふぅ、助かった……」  面倒な接客をやらずにすんだことにホッとしていると、内田がずかずかと作業場に入ってくる。内田は50代前半の男で、美晴がいる店舗も担当しているエリアマネージャーだ。横暴なゴリラ顔のこの男は、ほとんどの従業員に嫌われている。 「なんだここ、寒いな。チーフは?」  内田は舌打ちしながら毛むくじゃらの腕を擦ると、面倒くさそうに美晴に聞いた。 「事務室にいると思います」 「そうか。冷房消しとけよ。節電しないとダメだからな」 (この真夏に冷房消したら熱中症になるし、野菜腐るわこのゴリラジジィ)  内心悪態をついていると、内田の道を塞ぐように、アイ子が入ってきた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加