新しいAI

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新しいAI

 美晴の職場にアイ子が来てから1年。パートだった美晴は正社員になり、小さな家を買ってひとりで暮らしている。  技術が発展した現在、2階建ての戸建ても300万円あればコンクリハウスが建てられる時代だ。しかも半月足らずで建つのだから驚きだ。  そのかわりデザイン性は皆無で、コンクリの箱に窓と玄関ドアがついているだけのシュールな見た目だ。  50万も払えばプロ達が好みに合わせて塗ってくれるのだが、美晴は内装に力を入れた。  壁紙は各部屋暖色系のパステルカラーにし、家具も同じような色合いで可愛く仕上げる。こだわりぬいたせいで家より高くついたが、満足している。  人生の大きな買い物をした美晴は、その後大きな散財をすることなく、真面目にコツコツ働き、順調に貯金をしていった。  家を買ってから2年、美晴は目を輝かせながらテレビにかじりつく。 『これで結婚要らず!? オーダーメイドでAIを作れる時代が来た!』  真っ赤なスーツに黄色のバカデカい蝶ネクタイを身に着けた大物芸人が、研究所らしき場所で大声を出している。その横には白衣を着た小柄な中年女性が、苦笑しながら彼を見ている。 『って、景気良くタイトルコールしましたけどもね、どういうことですか、これは』 『顔、性別、性格、体型のAIをお造りします。設定すれば家事も仕事もしてくれるので、奥さんがほしい、専業主婦になりたいという願いが叶えられるんですね』 『ええーっ!? どうしよう、奥さんに追い出されちゃう!』  中年女性はにこやかに説明し、芸人はオーバーリアクションで返す。彼女の笑顔が、美晴の中でアイ子とダブる。  芸人のオーバーリアクションやオウム返しのような質問にイライラしながら、懸命に女史の説明を聞く。  要約すると基本料金は200万円。この基本料金の中にはAIのビジュアル料も入っているという。チビデブの不細工にしようが、高身長のイケメンにしようが、同じく200万円ということだ。AIになってようやくどんな容姿でも同じ価値と示せるようになった気がして、複雑な気分になる。
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