新しいAI

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 200万円のままだと中身はスタンダードタイプが入っているらしい。スタンダードタイプは一般常識の善悪でものを言う。正しいことしか言わないが、まったく空気を読めない。  なのでスタンダードタイプはあまり人気がない。  性格は自分でカスタマイズすることができるらしく、それぞれ10段階あるという。例えば優しさを10入れると聖人君子のように優しくなり、1だけだと、他にカスタマイズする性格にもよるだろうが、ツンデレになるといった具合だ。  値段はそれぞれの性格と段階によって変わり、あまり需要がなさそうな”怒りっぽい”や”ネガティブ”などは安価だ。需要が高そうな”優しい””面倒みがいい”などは、”怒りっぽい”などの倍近くの値段だ。  オーダーAIを購入できるのは5ヶ月後とのこと。 「ボーナス入ってからだ……」  美晴はさっそく計算を始める。今の貯金額は約400万円。毎月20万前後貯金し、ボーナスは約80万円入る。うまく行けば2体のAIが購入できる。 「いや、絶対するんだ!」  決意を固めた美晴はパソコンを立ち上げると、在宅ワークのサイトを開いた。ここにはパソコンでできる仕事がたくさんある。美晴は片っ端から文字起こしやデータ入力の仕事をこなしていった。  そしてオーダーAI発売日当日、在宅ワークをしたかいもあって、貯金額は600万弱になった。美晴はそれをリュックサックに入れてAIラボへ向かう。  てっきり混雑していると思ったが、美晴の他にいる客は片手で数える程度だ。  初めてAIラボに入ったが、白を基調とした空間は広々としているが息が詰まる。これはきっと機械特有の無機質なにおいのせいだろう。  店内には様々なAIが展示されている。家事をサポートする安価なロボットに、今主流になっている人型のAI、災害時に役立つレスキューロボと、幅広い。 「いらっしゃいませ。どのようなAIをお探しですか?」  AIの種類に感心していると、女性店員に声をかけられた。スーツに暖色系のスカーフと、ケータイショップの店員のようないで立ちに、少しホッとする。異質まみれの空間で、ようやくまともなものを見つけた気分だ。
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