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「お試しカスタマイズの説明をさせていただいてよろしいでしょうか?」
「あ、はい」
美晴が向き直ると、女性はお試しカスタマイズについて説明してくれた。AIと暮らしていて理想とは違うと思ったら、1週間以内に再びカスタマイズすることが可能になるという。再カスタマイズは前回のカスタマイズから1週間以内という期限さえ守れば、何度でもできるという。
差額の金銭は返金したり、追加で支払ったりするとのこと。
この説明が終わる頃には、美晴と瓜ふたつのAIが完成した。
「こちら、320万円になります。料金は一括でお支払しますか? ローンですか?」
「一括で今払います。あと、もう1体作りたいのですが……」
「かしこまりました。では、少々お待ちください」
女性がタブレットを操作すると、美晴AIはベッドごと床に沈んだ。数秒後には、ベッドだけが戻る。
「先ほどお造りしたAIの最終メンテナンスをして、服を着せます。その間に次のAIを造りましょうか」
「はい」
この空間は少し異常だと思いながらも、理想の人を造れることにワクワクした。女性と一緒に、2体目のAIを造っていく。
夕方、ほっそりした美しい中年女性が、顔がそっくりな若い女性を連れて歩いている。
「ふたりとも、帰ったら何食べたい?」
「美晴が好きなものでいいよ。だって私、お姉ちゃんだし」
「えへへ、ありがとう。お母さん、晴美お姉ちゃん。私、オムライスが食べたいな」
3人は仲睦まじく寄り添いながら、コンクリハウスに帰っていった。
1週間もすると美晴2号こと晴美は、一流企業に就職した。
「美晴は今まで頑張ってきたんだから、あとは私に任せて。いつでも仕事辞めていいからね」
美晴はお言葉に甘えて即刻仕事を辞めた。遅めに起きて好きなことをして、午後は美しい母と買い物やストレッチなどをするという、自由気ままな生活が始まった。
無欲設定にした晴美は、生活費を母に、残りをお金をすべて美晴に渡した。これで美晴は無職ながらに遊んで暮らせるほどのお金を手に入れている。気が向いたらパソコンでの在宅ワークをする程度。それでも母も晴美も偉いと褒めてくれる。
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