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優しい母と姉を手に入れてから1年後、美晴は1千万を持ってAIラボへ向かう。このお金のほとんどは晴美と母が稼いだものだ。晴美が働き出した1ヶ月後、母はパートを始めた。生活費は晴美からもらった額で事足りるため、半分以上はお小遣いとして美晴に渡されていた。
「すいません、AIを2体造りたいのですが」
近くの店員に声をかけると、例の部屋に案内された。2体の男性AIを造り上げる。ひとりはダンディなイケオジ。もうひとりは爽やかな高身長イケメンだ。
イケオジはとにかく優しく、仕事もできる。技術が発展していたため、初めて造ったときよりも凝っているにも関わらず、安価に造れた。
もう1体はこだわりぬいたため、600万円もかかってしまった。生活してみないと分からないが、それでも満足のいくものが造れた気がする。
夕方、若い女性はふたりの男性と腕組をしながら楽しそうに歩いている。
「お父さん、お兄ちゃん。今日の夕飯なんだろうね?」
「何が出てもきっと美味しいよ。母さんは料理上手だからな」
「父さん達は本当に仲がいいね。そうだ、帰りにケーキ買っていこう。美晴、何がいい? 美晴の好きなものを買ってあげるよ」
「ありがとう、響也お兄ちゃん」
親子は幸せそうな顔をして、ケーキ屋に入っていった。
男家族が増えて1週間後の真夜中、美晴がうとうとしていると、ドアが開いた。侵入者はドアを閉めると、ベッドの中に潜り込んできて美晴を抱きしめる。
「美晴……」
心地のいいテノールが、美晴の鼓膜を震わせる。
「お兄ちゃん……?」
「美晴、お兄ちゃんな、美晴のことが好きなんだ。妹ではなく、ひとりの女性として……」
響也の告白に、美晴はにやりと笑う。
「嬉しい……。私も、お兄ちゃんのこと好き」
「よかった……。俺達、両想いなんだな。なぁ、こっち向いて」
言われたとおり振り返ると、唇が塞がれる。熱い唇は、とても機械とは思えない。胸板に耳をよせれば、トクトクと鼓動が聞こえてくる。
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