魔力

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魔力

恋愛対象の人を前にして、一番ガッカリするのは何処ですか? とアンケートを取って、驚く程に高かったのは「歯の黄ばみ」だった。 それを聞いたチカコは急いで、自分の歯を鏡で確認した。黄ばんでいる以前に、チカコの上の奥歯には例えるならそう。お風呂場のピンクぬめりみたいなものが付着している。粘ついたり、変な匂いがする訳ではないが見た目は気持ちの良いものではない。自分でも気持ち悪いと思うし、どうにかしたいと思って居るが、これは生まれつきのものだった。 勿論、歯医者にも行って、表面を削って貰ったりもしたが直ぐにまたこのピンクぬめりは出て来てしまうし、歯磨きのし過ぎで知覚過敏まで発症してしまった。最早、食べる事も人と話すのも億劫でたまらない。 そんなある日だった。携帯を弄っていたら、ある広告が目に留まった。「どんな歯の黄ばみもこれ一本で撃退! あなたも手軽にホワイトニング!」と軽快な女性の声で宣伝されている。「どうせ、又何時もの釣りだろう」と閉じかけた時だった。 「ごめんなさい! このキャンペーンは無くなり次第終了となります! 又、動画を閉じてしまうと二度とこのキャンペーンを受ける事は出来なくなります」と耳障りの良い、言葉が届いて思わずスキップを押し損ねてしまった。ある意味で魔力を持った女性の宣伝を聞き終えたチカコは無意識の内にキャンペーンサイトへと指を走らせていた。 表示されたウェブページにはカウントダウンと残りの個数が表示されている。ぼーっと眺めている間にカウントダウンと在庫数がみるみる減って行く。言い知れない焦りを覚えたチカコは携帯を両手で持って、両手の親指を駆使して急いで個人情報を入力した。
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