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桜と菊と。
期待した分、裏切られた時の絶望は大きい。
だから私はもう何にも期待しない。
そう、決めていたーーーー
桜の開花と共に迎えた高校の入学式。
今年の開花は例年よりもずっと遅いらしく、4月の初期に開花宣言が出された。
今年は雨も少なく、4月中旬だというのにも関わらず校庭では桜が百花繚乱の有様で。
まだ散るのには時間が掛かりそうだ。
正直言って、私はあまり桜が好きではない。
いい思い出がないからだ。
なのに。
「さくらさん!」
私を呼ぶ声が聞こえる。
そう。桜が好きではないのに私の名前は、咲良 菊なのだ。
「なに。」
振り返る。そこには今日から同じクラスの| 彩生 蒼菜(あき そうな)さんがいた。
「集合写真撮るから来てって、はまちゃん先生が。」
可愛らしくーーーー実際、彩生さんは美少女で可愛いのだがーーーー首を傾げる。
ちなみにはまちゃん先生というのは担任の浜辺 和(はまべ のどか)先生のことだ。浜辺先生はまだ若く、生徒からも親しみを込めて「はまちゃん先生」と呼ばれている。
「分かりました。」
私は頷く。
すると敬語に気が障ったのか彩生さんは綺麗な顔をしかめる。
「ね、私たちクラスメートなんだから敬語は禁止っ!
おっけ?」
「・・・分かった。」
そう応えると彼女は満足そうに笑う。
そして、私の高校生活を変える魔法の言葉を紡ぐ。
「友達になりましょう?」
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