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次の日、私は学校を休んだ。
月曜日、久々の学校。結局、休んだ次の日は土日だったこともあり、久しぶりの登校になってしまった。
「きく?もう体調は大丈夫なの?」
「うん。ありがとう、大丈夫。」
蒼菜はいつも私のことを信じてくれている。
今だって、私が休んだのは風邪だと信じている。そんな優しさに私は依存してしまう。
その時、数人の女子が私たちの隣を通り過ぎる。
「そーいえばさぁ、昨日3組のやつが桜見てたら川に落ちたんだってー」
「えー、まじ、それ大丈夫なやつー?www」
「それがさぁー、結構浅かったらしいから別になんともなかったんだってさーwww」
「なにそれ普通にダサすぎwww」
「それなーwww」
その子たちはぎゃははは、と笑ってまた、話題は移り変わっていった。
「.........あまり、いい気分はしないわよね。ああいうの。」
蒼菜はちらりと彼女たちを見て呟く。
でも私はそれを聞いてられなかった。
桜 川 落ちる
そのフレーズが頭の中でぐるぐる回る。
藤のことが思い浮かぶ。
蒼菜と同じように優しく浮かべるその笑顔が。
私と並んで桜を眺めた、その横顔が。
桜と一緒に落ちてゆく、その姿が。
浮かんでは消え、また浮かぶ。
「きく?」
蒼菜が心配そうに声をかけてくれていることに気づかずに。
私は座り込んでしまった、頭を抱えて。
通り過ぎる生徒が迷惑そうに私を避けていく。
「きく、きく!」
蒼菜が私の肩を揺すって、私は自分が座り込んで、周りの迷惑になっていることに気がついた。
「ほんとうに大丈夫?気分が悪いの?保健室へ行く?」
そう、心配してくれる声が私を責めているように聞こえて、私は蒼菜の手を振り払った。
目をぱちくりさせて私を見つめる蒼菜。
私は声を絞り出す。
「そうだよ、私がきちんと藤に危ないよって言ったら藤は死なないですんだ。私のせいで藤は死んだんだ。」
あの時からずっと思ってきたことだった。
私のせいだ、周りのみんながそう言っている気がして、あの後はまともに人と話すことが出来なかった。
「.........きく?どうしたの、なんの事?」
「どうせ!蒼菜も私のせいだって言う。みんなそうだった!」
そう叫ぶと蒼菜は黙り込む。それから黙って私を置いて歩いていってしまった。
「.........!」
私は自分が関係ない蒼菜に当たってしまったことに遅ばせながら気づき、いたたまれなくなり家に逃げ帰った。
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