引き出物はカタログギフトでお願いします

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 俺が両手を合わせて拝むまねをしたタイミングで、ウエイトレスが注文を取りに来たので、俺も小林さんもお得なランチセットを頼んだ。 「彼女がそう言ってきた理由は、飲んでたバーの近くに夜の間だけ出店してる、路上占い師に占ってもらった結果から、らしいんだけど」  ウエイトレスが去った後、上司はメニューを片付けながら話を再開する。 「その女は占い師に、『あそこのバーで飲んでるサラリーマンがアナタの未来の夫ですよ』と、言われたと?」 「ああ。だいたいそんな感じ。――彼女は酔ってたし、最初の電波な発言以外は変なことは言わなかったから、以降は普通に世間話とかをしたんだけど」  俺は「ふーん」と相槌を打ちながら、「その女は小林さんに話しかける口実に占いを使ったのでは?」と、邪推する。 「ウィットに富んだ、話してて楽しい人だったから、『連絡先教えて』と言われて教えちゃったんだよなぁ……。そしたら翌日から、『おはよう』『お休み』『今何しにしてるの』とか、頻繁(ひんぱん)にDMが届きだして」 「それでDMで告られて、押しきられてつきあうことになった、というオチだったり?」 「いいや。伊藤が言う通り、告白はされた。だけどオーケーしてないから、つきあってはいない」 「は?」 「前に話したと思うけど……オレは現在まだ女性不信というか……」 「あー……前カノに二股かけられてた挙げ句、本命だった金持ちの男と結婚するから、というひどいフラれ方したんでしたっけ」  半年ほど前の月曜日、小林さんがお通夜モードで出社してきたので理由を訊いたら、上記説明を死んだ目でされたなぁという過去を、脳の記憶メモリから引っぱりだす。 「彼女に今伊藤が言った通りの、つきあえない理由も説明したんだけど、あきらめてもらえなくて……」 「めっちゃ惚れられてんじゃないすか。やったね!」 「『やったね!』じゃない! ――先週の土曜の夜、親父と近所の居酒屋に入ったら、何故か偶然彼女もその店にいてさ」 「偶然ねぇ……もうそれ、占いの通りその女と結婚する運命なのでは?」  話に若干ストーカー味が混じってきたが他人事なので、面白くなってきた! とばかりに俺がテーブルから身を乗り出せば、上司はあからさまに嫌な顔をした。
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