【2000字掌編】桜の微熱

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 廊下に降り注ぐ陽光が、桃花のセミロングの髪に光の輪を作った。  今日の卒業式に間に合わなかった、桜の蕾がようやく綻び始めている。 「中峯、その節は大変申し訳ないことを致しました!」  式典を終え、窓辺で感慨に耽る桃花はリスのような丸い目を瞬かせた。突然、深々と頭を下げる男子生徒に困惑する。それが人気者の西脇であると気づき、桃花の眉が一瞬曇る。  西脇は頭を上げ、某アイドル似の端正な顔に反省の色を浮かべている。 「一年の時、勝手に中峯をイジッたりして悪かった」 「いいよ。そんなに気にしてないし」  桃華は、つとめて明るい雰囲気で受け流す。
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