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休憩コーナーにて
私が少し遅れて休憩をとり、休憩室でコーヒーを飲もうとして入り口に差し掛かったところ、中から女性二人の声が聞こえてきました。
「樋渡課長って、メチャクチャカッコいいよねー。クールでさ、前の課長よりもずっと仕事出来るし。見た目だって周りのなかで一番の男前だわー。まだ独身らしいよ」
「まじでー? だったらあたし彼女にしてほしいなー」
「あんたは彼氏がいるでしょーが」
そんなことを聞いてしまったことで入りづらくなってしまいました。
「あー。でも。残念ワンコだったらいいんじゃない? もし付き合ったら、あいつどんくさいから二股かけても全く気が付かなそう」
「え? 誰、残念ワンコって」
「えー?あんた知らないのー? みんな昔からそう呼んでるよ。佐藤のことよ、佐藤」
「あははー! 残念ワンコだって! それな。本当につかえないよね、あいつ。もしあんなのと付き合ったら、絶対に疲れるってば。あたし課長みたいにあのつかえない奴を根気よくフォローするの、絶対に無理ですからー」
何だか嫌なことを聞いてしまいました。仕方ない。席に戻りましょう。
そう思い、振り返った時……。
私は困惑しました。
佐藤さんが目の前に立っていたものですから……
彼はこちらを見ながら目を大きく見開いて、また私にペコペコお辞儀しだしました。そしてそのままくるりと振り向いて、走って行ってしまいました。
ああ……彼女たちが中で言っていたことは……佐藤さんに全て聞こえていたでしょうね。
それにしても彼がいたことに全く気がつきませんでした。
声をかけてくれれば良かったのに……
でも彼のことだからおそらくは私が邪魔で、それを言おうとしたけれど遠慮してなかなか声をかけることが出来なかったのでしょう。いつもおどおどしていますからね……
私もそのまま彼のあとを追いかけるよう、その時は結局席に戻りました。
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