空の上のポスト

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2ヶ月前にママが死んだ。 そして、私の心も死んだ。 「ねぇねぇ、みお。空の上には死んじゃった人に手紙を渡せるポストがあるんだって。」 ジリジリと照り付ける太陽。 蝉の鳴き声が響く。 私は太陽の熱を感じながら空を見上げ目を細める。 前に、かなが言っていた事を思いだした。 「そうだ、かなが、そんな事言ってたな、、」 私は全く信じていなかった。 ママが死んじゃってから、私はおばあちゃん家に引き取られて生活している。 最初の1ヶ月くらいは毎日沢山泣いた。 「みおちゃん、元気出すんだよ。」 そう言って、おばあちゃんは、私の背中を擦ってくれた。 そんな私を見て、おばあちゃんは、私の前では歯を食い縛り、泣くのを我慢してた。 そんな日の夜は、おばあちゃんは仏壇の前で泣いていた。 そんな毎日だったけど、そのうちに涙も出なくなった、、 涙が出ないかわりに、私の心は何かを失い心に穴が空いてしまったかのように、いつも苦しい。 最近じゃ、泣こうとしても泣けない。 シングルマザーで、頑張って働いて私を食べさせてくれていたママ。 私の前では、いつも元気に笑顔だったんだ。 ママの死はあまりにも突然で、過労死だった、、 私は、ママがそんなに疲れていたなんて全然気が付かなかった。 今は毎日、力無く、無気力な状態で何をしても、全く楽しくない。 ママの居ない世界なんて、まるで真っ黒の絵の具を垂らしたみたいな世界。 そんな生活をしている。 ある日の事、いつものように布団に入ると不思議な夢のようなものを見た。 私は自分の身体を抜けて、自分の姿を見下ろしている。 これが幽体離脱なのかな? 始めは何が何だか分からない。 すると、どんどん上へ昇って行く、天井を越えて屋根を越えて自分の家を見る。 更にどんどん上へ行くと鳥や飛行機や雲もある。 下を見ると自分の育った街が小さく見える。 「うわぁ~綺麗!」 心が少し癒される様な感覚になった。 私はとても心地良く感じた。 そこまで来た時、フッと思い出した。 あっ、私は空の上のポストにママへの手紙を入れに来たんだ。 すると目の前に赤いポストが現れ、手には手紙の様なものを持っていた。 「えっ?持ってるじゃん!」 と、少しビックリした。 でも手で字を書いた訳では無いけど。 だけど、間違いなく私の思いが詰まっていると確信した。 心で思った事が勝手に封筒の中に入っていくみたい。 「ママ、ごめんなさい。 私、全然ママの大変さがわからなくて、、 もっと、お手伝いしたら良かったのに、 ごめんね、、 ママ、天国で幸せに暮らしてね。 大好きだよ、ママ。」 何も感じる事無く頬を伝う雫 ずっと泣けなかったのに、、 「あれっ?なんで?涙?」 そう思った時、じんわり目の奥から熱くなるのを感じた、、 止めどなく、滴り落ちる涙。 私は、突然亡くなってしまったママに気持ちを伝えられなかった事で苦しかったんだ、、 私はその手紙を、そっとポストに入れた。 きっと、ママに伝わったよね、、 涙を拭い、重かった心が、スーッと軽くなるのを感じた。 とても心地が良い。 「このまま、更に上に行ったら気持ち良さそうだなぁ。」 でも更に上に行ったら戻れなくなる、そんな風に思い 「ダメだ!戻らなきゃ」 と意識を下の自分の身体に向けたその瞬間、 私は目が覚めた。 空の上のポストは、あったんだ。 ママ、 私ママが居なくても、もう大丈夫だからね。 私、おばあちゃんと、頑張って生き抜くよ。 だからママ、私とおばあちゃんを天国から見守っててね。 ママ、ありがとう。
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