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ーー
雨の音が聞こえる嫌な朝。
私は自分の心臓の辺りに見慣れない蕾を見た。
「なんじゃこれ!」
震える手をゆっくりと蕾に近づける。けれど蕾に触れることは叶わず、ふにっとした自分の胸に手が届いただけだった。
「え、え? ほんとになんじゃこれ?」
私はまだ寝ぼけてんのか?
それかこれは夢だ。
そう思って頬を引っ張ってみる。
「痛いな……」
ベッドから起き上がってカーテンを開ける。ザーッとドシャ降りの雨の匂いがした。窓を開けるとその匂いが強くなる。梅雨時だから仕方がない。
「うん、嫌な朝だ」
もう一度自分の身体を見下ろす。やっぱり心臓の位置には蕾があった。
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