0人が本棚に入れています
本棚に追加
勝手に想像して勝手にキレてる私のことなんて知らない和泉君は、「ねぇねぇ」と私の顔を覗き込んでくる。
「和泉君は……好きなことないの?」
「は?」
彼にとってみれば脈絡のない質問に目を見開いている。
誰と居ても花が開かない。楽しそうに笑っているのに。
休み時間に男子たちとゲームをしていても、可愛い女子と話していても。やっぱりその花は咲いていない。
「何でいきなりそんなこと訊くの?」
「……その、本気で好きなことないのかなと思って。ごめん」
触れられたくない部分だったのだろうか。表情が固まった気がした。確かに失礼なことを言った自覚はある。
「ないかもね」
「え?」
「本気で好きなこと、ないかもね。千葉さんは?」
「私は……」
和泉君だけじゃない。私も同じ蕾だ。
だけど、私だって笑うし楽しいと思うこともある。
最初のコメントを投稿しよう!