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和泉君の言葉で、私たちは近くのゲームセンターを目指した。ゲーセンなんて映画の待ち時間でしか行ったことないわ。 辿り着いたゲーセンに彼は迷うことなく入って行く。カッパを脱いで彼の後を追った。 「ねぇ、千葉さんはどんなゲームが好き?」 「ゲームはしない」 「えー? 楽しいのに」 「だったら楽しそうにすればいいのに」 「……おれ、楽しそうに見えてない?」 おっと。口を滑らせてしまった。 花を咲かせるくらいに心から楽しめばいいのにって意味だったのだけれど、伝わらないよね。きっと、彼にとって私はかなり嫌な女に見えていることだろう。 「凄いね。千葉さんはおれの事よく見てくれてるんだ?」 違うよ。私はキャンディタフトを見ているだけだよ。 「あ、これ可愛い」 「取ってあげようか」 視線を外した先に見えた小さな黒猫の、何かのキャラクターのぬいぐるみ。 意図せず話を逸らす形になったけれど、和泉君は気にした様子がない。 「おれ、皆とゲームして話して、笑えるのにさ。どうしてかそれが心の底から笑えてるって気がしないんだ。不思議だよね」 ユーフォーキャッチャーの機械に小銭を投下した彼は、迷いなくレバーを操縦しながら自分のことを話してくれる。 「はい、取れた」 「すっげ」 1回でぬいぐるみを取って見せた和泉君は、満面の笑みでそのぬいぐるみを私にくれた。
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