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和泉君はどんな視線だって気にも留めずに話しかけてくる。
あまり目立ちたくないんだけどなぁ。
私はふと彼の心臓を見た。最近ずっと見ているから気が付かなかったけれど、最初の頃より随分と蕾が膨らんで緩んでいる。そして女子たちや友達と一緒にいるときは、その蕾は固く閉じていることが多かった。
不意に私と目が合ったとき以外は。
「ねぇ和泉君」
「何?」
「心の底から好きなこと、できたの?」
「は?」
やっぱり脈絡のない質問に、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。
「と、突然何?」
「あー……うん、やっぱりいい」
これじゃあ私が彼のことを気にしているみたいだ。
私は首を振って彼から視線を逸らした。
「ねぇ千葉さん」
「何?」
「今日も一緒に遊びに行こうね」
それだけを言い残して、彼は去って行った。なんだ? 耳が赤いぞ。
「私何かした?」
「さぁ? あ、次の授業の宿題まだだった」
好きなアイドルの動画を見てた弥生は、ハテナマークでいっぱいの私を残して席を離れて行ってしまった。
何なんだよ……。
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