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「行ってきまーす」
私はカッパを着て秋と一緒に家を出る。中学生の秋に合わせて自転車を押して歩く。
途中の道で別れてから自転車に跨って自分の学校を目指した。
家から自転車で10分ほどの公立高校は、私には少し偏差値が低い。それでも近い場所がよかったからこの高校を選んだ。制服も可愛いし。別に偏差値気にしてないし。
「おはよう有栖!」
「お……はよう」
「え、何今の間?」
自転車を止めていると、親友の弥生に声を掛けられて振り向く。心臓の辺りには例の花があった。けれど蕾だ。
「ねぇ! 昨日の歌番組見た? レイ君がほんっとにカッコよくて!」
弥生が、大好きなアイドルのレイ君の話を始めた途端にその蕾が開いた。
うん? 何で今開いたんだ?
「聞いてる? 有栖!」
「うんうん。カッコよかったよねレイ君」
「今はアラタ君の話!」
聞いていなかったようだ。
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