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教室に移動する間、弥生はずっと好きなアイドルの話をしていた。好きなことを話す弥生の気持ちを反映するように、心臓の花は活き活きと咲き誇っている。
私の心臓にある蕾は、朝から一度も咲いていない。
「ねぇ弥生」
「はい?」
「花に詳しかったよね?」
「家が花屋だし、それなりには。どうかした?」
「白くて、花弁が一杯ある花って知ってる?」
あまりにもヒントが足りなかったようで、頭を抱えている。
私は適当に机の中からノートを取り出し、皆の心臓辺りに見える花の絵を描いた。
「キャンディタフトかな? 有栖の絵ってホント好き! これ頂戴?」
「え、どうぞ?」
ページを千切って弥生に渡すと、嬉しそうに紙を受け取った。
「で、キャンディ……って何?」
「キャンディタフトね。イベリス、トキワナズナ、マガリバナ」
「いや分からん」
「4月から6月に咲く花で色は白、ピンク、紫とかあるよ。アブラナ科の花。花言葉は『心を惹きつける』だよ! 良いよねぇ、可愛いよねぇ」
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