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嬉々として教えてくれる弥生の胸でそのキャンディタフトが揺れている。
教室を見回してみても、やっぱり皆の心臓で花が揺れている。蕾なのは私だけかな。
「あ、私宿題終わってないんだった」
私の席から離れていった弥生の花が少しだけ元気をなくしたように見えた。
どういう基準で咲いているのだろう?
考えても分かりそうにない問題に悩んでいると、教室の中が一際騒がしくなった。
クラスの人気者のお出ましらしい。タレ目とワンレンが特徴的で、女好きと有名な和泉太一君。私は全然話したことないけれど。
「あ……」
ドア付近でゲームをしていた男子たちに捕まった彼の心臓には、花が咲いていなかった。和泉君はドア付近にいた友人たちと一緒にゲームを始めていた。
花を咲かせている友人たちと談笑していながら、和泉君の蕾は花が開くことはなかった。
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