それでも

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『では、今日の占いです! 今日の運勢の1位はおひつじ座のアナタ。 気になる人と急接近出来るかも。 ラッキーアイテムは………』    点けっぱなしのテレビからは今日も朝の情報番組が 流れてる。 「………朝か。」 正直内容はどうでもいい。 何座が1位になろうが、どこかで殺人事件が起ころうが、どっかの国でデモが起ころうが。 全部全部俺には関係ないことだ。 ベッドに寝転びながらそれをBGMにしていた。 今の俺にとってはこのテレビの音声だけが、時間を 知る手掛かりだ。 窓もカーテンも締め切った部屋。 電気は点ける必要がない。 スマホは電源を落として、ずっとテーブルに放置 したままだ。 だがそんなことはもう、どうでもよかった。 再び目を閉じる。 相変わらずテレビは世界の情勢を伝えていた。 そんなの俺には関係ない。 ───俺の時間はもうとっくに止まってしまったの だから。 その時ガチャリとドアが開かれる音がして、すぐに誰かの足音が近づいてきた。 騒がしい、まるで騒音みたいな足音だ。 「お兄ちゃん」 布団に包まる俺に、妹は遠慮なしに声をかけて くる。 厄介な相手が来た。
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