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「ねえ、また金魚探そうよ」
真理ちゃんが、庭の池を指さした。
ぐっと背中を押されるような感覚。
冷たい感覚。
”はやく。はやく。はやく。”
また、呼ばれている。
「真理ちゃん、待って」
”待たない。待たない。待たない。”
真理ちゃんが、池に向かって走っていく。
「ほら、見て! 金魚、金魚、いたよ」
真理ちゃんが、池を覗き込む。
「待って」
”待たない。待たない。待たない。”
―――ぼちゃん。
真理ちゃんが、池に落ちて行った。
大きな水しぶきがあがって、それきりだ。
叫ぶ声は、聞こえない。もがく様子も、まったくなかった。
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