信仰を貪る魚

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 目を開けた。  「真理ちゃん」  こっちを見た。  「よかった」  安心したから、真理ちゃんを抱きしめた。  ”信じて。信じて。私を信じて。”  後ろから、声が聞こえた。   ***  次の日、家の金魚が、みんな死んでいた。  花の水やりをしに行ったお母さんが、びっくりして叫んでいた。  あの日の黒い金魚と同じように、何匹もの金魚がぷかんと浮かんでいた。  ”ここにいる。ここにいる。ここにいるよ。”  やっぱり、後ろから声がした。  私は聞こえない振りをした。後ろを振り返ったりもしなかった。  でも、でも、やっぱり、いるんだと思う。  学校のトイレに入ったら、魚がびちびち跳ねていた。  机の中を覗くと、魚が跳ねていた。  ふと窓からグラウンドを見てみると、魚が跳ねていた。  帰り道、道路の隅で魚が跳ねていた。
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