イベリスの見た景色 1

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イベリスの見た景色 1

「それじゃー先輩! 今日はこの辺で失礼するっす! んでは、また明日―っす!」 「ああ……うん……気を付けて帰ってね」  軽く手をあげてウィンクをする、そんな自分でもあざといと思うポーズで別れの挨拶をすれば、なんともくたびれた様子の返事が返って来た。  先輩ったら、だいぶお疲れのようだ。んー、ちょっとからかいすぎたかな。 「それにしても、今日も面白い反応だったすね―。さすが先輩」  廊下を歩きながらそんな独り言が口をつく。先輩の驚いた反応とか、照れて赤くなった顔を思い出して、つい口元がにやけてしまう。  特に耳をふぅ―ってした時の反応といったらもう……ま、まあその分こっちも恥ずかしかったけど。  くぅっ、ウチとしたことが、からかう側なのに恥ずかしがっちゃうなんて……! こ、こんなのウチらしくない!  それもこれも、先輩が『どうすれば彼女が出来るのか』なんて変なこと聞いてくるが悪い。年頃の女の子にする相談じゃないでしょ。あのせいで変な調子になっちゃったんだ。むぅ、ウチを惑わすなんて先輩のくせに生意気な。  でも、なんで急にあんなこと聞いてきたんだろう。好きな子でも出来たのかな、それともただ彼女が欲しいだけ? まぁどちらにせよウチには関係ないか。  あ、でももし先輩に彼女が出来たら、部活はどうするんだろう。まさか先輩、部活やめちゃったりとか……さすがにそれは無いかもしれないけど、でも間違いなく優先順位は下がるだろうし。 「ん……それはあまり面白くないっすね」  なんでか分からないけど、想像するとモヤッとする。なんだかお気に入りのおもちゃを横取りされるような……そんな気分。部活は楽しいし、出来ればまだ現状のままでいてほしいものだ。 「うんうん。先輩には、今はまだ彼女は必要ないっすね~」  もうしばらくの間は、ウチと遊んでもらいたいっすからね――そう呟きながら、上機嫌で明日はどうやってからかおうかと考える。  先輩と二人だけの部活動。入った当初はすぐに退屈になっちゃうかもしれないなんて思ってたけど、想像していたよりも楽しい日々が続いている。今までも、そして今日も、先輩と過ごす放課後は、ウチにとって楽しい時間だ。  明日もきっと、楽しい放課後になるだろう。
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