私が殺した女【短縮版】

1/3
前へ
/3ページ
次へ
 うちに戻ると、サキがいた。  二人でルームシェアしていた2DKの、DK部分。その掃き出し窓を背に、サキがゆらりと佇んでいた。  ありえない光景に、わたしは息をのむ。そのまま呼吸することすら忘れ、立ち尽くした。  そんなわたしを嘲笑うかのように、サキは口の端を片方だけ上げた。 「久しぶり、ソノコ」    少し鼻にかかったようなその声は、間違いなくサキのものだった。  わたしは金縛りにあったかのように動けない。  汗だろうか、何か冷たいものがすっと背中を滑り落ちた。 「なんで」  ようやく絞り出した声は無様に震えた。  無意識に、ショルダーバッグの肩紐をギュッと握りしめる。  なんで、ここにいるの。  だって、サキ、あんたは。  わたしが、この手で、殺したはずなのに。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加