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うちに戻ると、サキがいた。
二人でルームシェアしていた2DKの、DK部分。その掃き出し窓を背に、サキがゆらりと佇んでいた。
ありえない光景に、わたしは息をのむ。そのまま呼吸することすら忘れ、立ち尽くした。
そんなわたしを嘲笑うかのように、サキは口の端を片方だけ上げた。
「久しぶり、ソノコ」
少し鼻にかかったようなその声は、間違いなくサキのものだった。
わたしは金縛りにあったかのように動けない。
汗だろうか、何か冷たいものがすっと背中を滑り落ちた。
「なんで」
ようやく絞り出した声は無様に震えた。
無意識に、ショルダーバッグの肩紐をギュッと握りしめる。
なんで、ここにいるの。
だって、サキ、あんたは。
わたしが、この手で、殺したはずなのに。
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