思い出の錦江湾

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「うわあ、すごおい」  飛行機の窓から見える景色に、思わず僕は叫んだ。伊丹空港を飛び立った飛行機は、グングンと高度を上げていた。眼下には大阪の街並みが広がっている。 「お母さん、すごいで。建物もすんごいちっさく見える」 「そうやなあ」  隣の席に座る母が、ニコリと微笑む。  僕は初めての飛行機に興奮していた。元々高いところが好きで、母にねだって観覧車や高層ビルに行くこともあった。  一方、母は高いところが嫌いで、鹿児島に行くのも飛行機を嫌がったのだが、当時鹿児島には新幹線が通っておらず、陸路はあまりにも時間がかかったため、渋々飛行機で行くことにしたのだ。  飛行機は時折揺れるものの、順調に鹿児島までの空路を飛んでいた。僕はずっと窓にへばりつき、上空から見る景色に見惚れていた。
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