リアルアバター

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 家族は両親と妹が一人。父は一般的企業に務めるサラリーマン。家業も無ければ親子代々警察官としてみたいな流れもない。決められた将来から外れぬようか過度なプレッシャーをかけられたわけでないし、両親の顔色をうかがいながらビクビクする必要もなかった。両親は生活態度や学校の成績にとやかく言うことはなく、進学、就職にも理想を押し付けることはなかった。そもそも品行方正の優等生を通してきたから指導を受けることなど無かったのだが。  そう、いつしか自分からそれらを背負い自分の首を絞めていた。  俺は何を恐れていたのだろう……。  決して無関心というのではなくお互いが個人を尊重し自由気ままに生きいる。穏やかで幸せな家庭。  彼らに蔑まされた記憶も自分を不幸だと思ったことも無い。しかし、自由に、素直にと言いながら裏があるようで。心の中では蔑み、嘲笑っているかのようで。  どうして自分がこんな感情を抱くのか分からない。    一度、母にこの薄汚い感情をぶち撒けたことがあった。それを母は非難も否定もせず受け入れ俺を抱きしめてくれた。  『あなたがそう感じるならそうなのでしょう。辛かったわね』  その時の母のショックと哀しみの顔は今でも忘れられない。何をバカなことを!と怒るとか笑い飛ばしてくれた方がよっぽど救われたのに。
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