エピソード3

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家に帰ると、けーちゃんは寝ていた。 まぁ時間も遅いから仕方ない。 でも、少しいらっとしてしまった。 けーちゃんに近づいてよく見たら、 ほほに涙のあと…。 あぁ、泣いてたんだ。 泣きゃいいってもんじゃないじゃん。 だいたい泣きたいのは僕のほうだから。 そうやってひとり毒づいてから、 ふっ、と笑いが漏れてしまう。 だいたいなんであんなことぐらいであんなに怒ったんだろう。 いや違う。 くらいじゃない。 クリーニングのことは発火点であって、 本質(ばくやく)は日頃の小さな積み重ね。 僕はちょっとづつストレスを溜めてたんだ。 けーちゃんの障害も前のご主人の性格への配慮とか、 いろいろ気を使いすぎて、 になろうとしすぎて、 爆発した。 そういうことだ。 「ごめんね」不細工な寝顔に語りかけて、 思わず笑顔になってしまう。 年上なのに、こんなのびのびしやがって。 とほっぺをつんつんしてやる。 やっぱり好き。 僕にだから、こんなに無防備で、 良いとこも悪いとこも全部見せてくる。 少しは遠慮したり僕に気を遣ってくれてもいいのに、 と思いながら、 そんなけーちゃんに惹かれている僕も大概だ。 そんなことを思っていたら、 「んん…」と、けーちゃんが目を覚ます。 「あっ 統二」 僕を見て嬉しそうにわらったあと、 スーツを見てちょっとうつむいて、 「スーツまにあったんだね」と呟く。 「ごめんなさい。忘れちゃって」 「そうだね。タイマーとか、 スマホのスケジュールするべきだったね」 僕はちょっと厳しめにする。 黙ってしまうけーちゃん。 「大事なことはちゃんとやろうね」 けーちゃんの肩に手をおいて、 少し優しく語りかける。 「僕もあんな怒ってごめんね」 そう言うと、 首を横にふるけーちゃん。 「私ももっと頑張るから」 一息おいて 「き、嫌いにならないで」と言った。 そんなこというような年齢じゃないでしょ? とおかしくなってしまう。 「ならない」そう言ってそっと抱きしめてあげる。 ストレートに気持ちを伝えるのは恥ずかしい。 けどこうしないとけーちゃんは不安なままだし、 それに今、2人きりだし。 まぁいっか。 嬉しそうに笑ってくれたけーちゃんを見て、 そう思う僕。
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