エピソード8

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エピソード8

最初に言っときますけど、 僕は浮気をする気もないし、 けーちゃんと一緒なら浮気する必要はありません。 ただちょっと迂闊だった僕のお陰で、 浮気したらややこしくなりそうだとわかった出来事。 僕、わりともてます(笑)。 いやまじで、意外なところでもてたりします。 たまに息抜きで利用するカフェ。 店員さんとも顔馴染みになります。 大学生のバイトくんと、 もう1人専門学校生らしい、 (さかい)みつりさんという女の子。 この子がくせ者でした。 人懐こくて、接客にも向いています。 お客様受けもよくて、 自分に自信のある、明るい子。 万人受けするタイプ。 バイトくんとも仲良くて、 僕も微笑ましくみていたりしたのかも…。 でもそれを境さんは『私を見てる?』 と勘違いしたようです。 自分に自信があるというのもあるのでしょう。 いつからか、僕との距離を急速に詰めてきました。 鈍感な僕でも、『これはまずい』と思うくらいに、 境さんは、僕に夢見ているのがわかりました。 「今度ご飯いきませんか?」 誘ってこない僕に、しびれを切らした彼女は、 ある日そんなふうに声をかけてきました。 「はは…。こんなおじさんとじゃなくて、 ほら、バイトくんとか誘ったら?」 「えぇ?久住さん全然おじさんじゃないですよ」 「ありがとう。でも僕既婚者だし…」 この言い方がよくなかった。 境さん、意外と思い込み激しいタイプだったようで、 『妻がいるから』ダメ。 だと思ってしまったようです。 (こじ)らせたのは僕なのか彼女なのか…。 けーちゃんが巻き込まれてしまいます。 ある日—。 「ただいま」 「あ、お帰りなさい…」 けーちゃんと目があいません。 心なしか何か考え事をしているような、 沈んだ感じがしました。 仕事で何か悩んでるかな? とか、ちょっと気になりましたが、 けーちゃんに聞いても、 「え?何も悩んでないよ」 と笑顔を張り付けます。 何かした記憶もないし、 いろいろ解決しないまま、 何日か過ごしました。
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