エピソード8

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「あの子、とっても幸せそうに笑ってて…」 店員さんだから笑顔は必須だよね? 「それをなんとなくかわしてるような統二が許せなくて」 「ちょっ、ちょっと待ってよ」 僕はあわててさえぎる。 「けーちゃん僕に浮気しろって言ってるの?」 けーちゃんは盛大に首を横にふる。 「だから、だからどうしていいわかんなくて」 とうとうたまってた涙は流れ落ちた。 「私も統二のことすごく大好きだから、 離れたくない。 でも、あの子の気持ち考えたら、 私の方が大人だし、私の方が我慢できるかもって…。 なのに、いざとなると統二と別れることできなくて。 弱くてごめんなさい」 ぼろぼろ子供みたいに泣くけーちゃん。 いや待ってよ。僕の気持ちは? 「いやけーちゃん」 僕はけーちゃんのかたをつかんで、 こちらを向かせる。 「これさ、僕の気持ちは?」 けーちゃんはまだ迷走してるみたいだけど、 「僕は好きでもないのに、 あの子と付き合わなきゃならないわけ? 何の罰ゲーム?僕けーちゃんになんかした?」 矢継ぎ早にいろいろぶつけてしまう。 「誰も幸せにはならないよ? 僕があの子を好きだと思ったの?」 「い、いやだっ…!」 けーちゃんはまた泣き出した。 「じゃぁなんでそんな風に思ったんだよ? 僕の気持ち考えてほしかったし、 信じてほしかった」 正直けーちゃんの思考がよくわからなくて、 少しイライラする。 「僕はけーちゃんを手放したくないから、 他の男にも嫉妬するし、 けーちゃんの気持ちを僕に向けさせていたい」 ちょっと恥ずかしいけど、素直に伝える。 「なのにけーちゃんは、 すぐ僕を手放そうとしたのが許せない」 けーちゃんが僕にすがり付いてきた。 「す、すてないで…」 昭和のドラマかよっ!ってセリフに、 思わず笑いそうになる。 でもそんなに好きだと思ってくれることに安心する。 でも簡単には許さないけど。 「うーん、でも僕傷ついたし」 ちょっとお仕置きかな。 「しばらく別々で寝よう」 それでいい?抱き締めて聞いてみる。 ちょっと僕を上目使いでみたけど、 僕の意思はかわりません。 それがわかったみたいで、小さく頷いた。 「あとも無しね!」 ガーン、というテロップが見えそうな位落ち込んだけど、 しゅんとしておとなしく離れるけーちゃん。 まぁ僕のほうが、 いつまで我慢できるかわからないけどね。
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