エピソード8

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こうして、 僕たちの一騒動は無事に解決したんだけど、 けーちゃんの謎の思考回路は僕をまた驚かせた。 まさか相手の女の子に、 あれほど肩入れしちゃうとは思わなかった。 けーちゃんに身を引かれたら、 僕が耐えられない。 実際 “おさわり禁止”なんていいながら、 3日ももたなかったのは僕だし(笑)。 騒動のあと、 僕はけーちゃんを連れてカフェにいった。 バイトくんに聞いて、 わざわざ境さんのいる時間に…。 けーちゃんはびくびくしていた。 奥さんなんだから、 どうどうとしてたらいいのにって言っても、 境さんを傷つけに行くのは気が引けるようです。 「いらっしゃいませ」 バイトくんがいつものように迎えてくれる。 「今日は仕事じゃないから、カウンターいい?」 「どうぞ」 バイトくんと僕の会話のあと、 「こんにちは」 と小さな声で、けーちゃんが挨拶する。 「いらっしゃいませ」 バイトくんは営業笑顔でけーちゃんに答える。 「いつものろけ話きいてたから、 奥さまとは初対面の気がしません」 とか余計なことを言ってくれる。 奥さまとか言われて、 けーちゃんは照れていてかわいいけど、 ほのかに嫉妬する。 カウンターに座ると境さんが奥から出てきて、 「いらっしゃいませ」 と言いかけて、顔を曇らせる。 「アイスカフェラテとアイス一杯ずつお願いします」 構わずオーダーする。 「はい」僕だけを見て笑顔で答える。 すぐに用意された飲み物に、 「いただきます」 と言って口をつけるけーちゃんを見つめる。 美味しさに表情がほどけるけーちゃんに安心して、 僕もアイスコーヒーをいただく。 「あの」けーちゃんが口を開く。 立ち上がって頭を下げる。 「ごめんなさい!」 全員が『え?』となる。 「私、私もやっぱり統二が必要だから、 諦められません!だからごめんなさい!」 言ってることは相変わらずよくわからい。 けど、けーちゃんにとっては、 精一杯なんだろうなぁ。 「境さんごめんね。 僕も君の気持ちには答えられない」 僕も軽く頭を下げる。 「あ いぇ…」境さんが涙を流した。 バイトくんがそっと、 バックヤードに境さんを促して、 僕たちに、 「すいません。ごゆっくり」と言ってくれた。 僕は彼に小さく礼をして、 けーちゃんを座らせて、 飲み物の残りを味わった。  けーちゃんはしばらくへこんでたけど、 これは僕も譲れない僕の気持ち。 境さんにもすぐにきっと、 素敵な男性(ひと)がみつかるはず。 そんな予感がした出来事でした。
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