カミングアウト

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カミングアウト

ある日、けーちゃんの子供の二者面談で、 けーちゃんはカミングアウトしてきた。 「先生、私…、ちょっと、 ホントにちょっとした知能障がいっていうか…。 人より劣っているというか」 そう言われて、なんだ急に?と思ってしまった。 「だから、子どもたちにも片付けかたとか、 人との距離のとりかたとか、 うまく教えてあげられなくて…」 その話を聞いて、 なんかきゅうってなった。 せっかく距離を置いたのに、 “好き”という気持ちがぶり返してきた。 「大丈夫ですよ。 お子さんちゃんとお友達とも仲良くできてるし、 勉強もちゃんと理解して進められてます」 嘘ではない。 でもテンプレ通りの返答を張り付けた笑顔で答えた。  けーちゃんはほっとしたように笑って、 「そうですか、よかった」とつぶやいた。 年上だし、人生的に先輩になるんだけど、 なんだか守ってあげたいと思った。 華奢でもないし、か弱くもないんだけど、 そんな風に思わされた。  ある日けーちゃんのお子さんから、 お母さんはお父さんの機嫌を伺ってる、 って言うような話を聞いた。 でも、けーちゃんは旦那さんと別れないし、 僕が口出せることじゃない。 けっこう悩んだ時間は長かったよね。 きっかけはあっけなかった。 僕がたまたま見てしまった。 けーちゃんの元旦那さんが女の人と…。 まぁ、そういこと。 それが僕の背中を押して、 けーちゃんは今は僕の奥さんになれたんだ。 その時のけーちゃんは確かに、 悲しくは思ったのかもしれないけど、 僕にはなんだか、 安心したようなほっとしたように様に見えた。 別れる理由を探していたのかもね。
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