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エピソード1
けーちゃんは、覚えているのが苦手だから、
メモをとる。
でメモを失くしちゃうから、付箋が便利。
冷蔵庫やパソコンには、
わりといつも付箋がはってある。
それを確認しながら仕事したりすればスムーズにいく。
ある日—。
「統二、メモがない」
「え?メモ用紙終わった?」
「ううん。メモをした記憶はあるんだけど、
その付箋をどこにはったか忘れた」
あぁ、そのパターンだね。
たぶん電話かなにかでメモをとって、
その場にあった何かにはりつけたんだろうなぁ。
でもその何かがわからいのか。
「手帳とかは?」
「見た」そういいながら首を横にふる。
「財布とか…筆箱?」
「なかった」
あぁもう探すのに飽きてきちゃったかなぁ。
こうなるとダメ人間が発動したりする。
とりあえず、とか言いながら 、
冷蔵庫からチョコとか出してきて、
食べ始めるけーちゃん。
「もうちょっと頑張って探そうよ」
えーっていう顔しないでよ。
けーちゃんの仕事でしょ?
「じぁさ、何をメモしたか覚えてる?」
「うん、コピーの納期」
あぁキャッチコピー考えてたんだ。
僕はけーちゃんの普段の仕事の様子を思い浮かべる。
大抵はパソコンやスマホで調べ物したり、
書き物したりだしなぁ。
あっ!参考文献とかみてるなぁ。
「ねぇ、雑誌とか辞書とか…」そう言った瞬間、
けーちゃんは弾かれたように、
デスクの本棚からフランス語の辞書をだした。
その表紙にがっつりなじんだ—付箋—。
「あった」あぁ超笑顔だ。
「さすが統二」どういたしまして。
「お礼にチョコあげる」子どもかよ。
僕は大人だからね。
ちゅ…
けーちゃんの口に残った、
チョコの余韻をご褒美でもらった。
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