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兄貴が何か言いかけると、玄関のほうから大きな音が聞こえた。
「帰ったぞ!」
うっわ。まじ父さんの声じゃん。
何故か陽気にワハハと声がする。もしかして総一朗おじさんも一緒だったりする!?
母さんが玄関まで迎えにいくと、父さんはやたらご機嫌で大声で話している。
『おいおい大丈夫か?』って声もしたからやっぱり総一朗おじさんも一緒だ。
総一朗おじさんは蒼兄の父親で、父さんの盟友。父さんと同い年らしいんだけど、もの凄くダンディなイケオジだ。蒼兄は美人って感じだけど、総一朗おじさんは美男って感じ。髪は真っ白だけど、後ろに撫でつけていて、それがなんていうかセクシーなんだよな。
あ、うちの父さんも年齢よりかは若く見えるんだけど、まあちょっと若造りしたおっさん感は否めない。
二人と母さんがリビングに入って来ると、ゲッって声がした。まさか蒼兄!?
「総一朗おじさん!こんばんは!」
「おお、湊。久しぶりだな。なんか変わったな」
「うん。筋トレ頑張ってるから」
俺がそう言うと総一朗おじさんはそうかそうかと微笑んでくれた。
「───今日って接待だったんじゃないの?」
蒼兄の冷えた声がした。今日は本当に蒼兄の色んな面が出てくるな。そんな声聞いたことなかった。
「いや〜会議が早く終わってね。早めに食事に行けていい気分だったから、早く帰ってきちゃったんだよねー!」
父さんが空気も読まずに上機嫌でデカい声で答えた。父さん……空気読んで!
蒼兄は舌打ちしてるし、兄貴も眉間に皺を寄せている。それを見た家政夫がそれぞれの顔を見ながら、明らかに困った顔をしてた。
兄貴たちがあまりにも大人気なさすぎるので、仕方なく俺が紹介してやる。
「俺の父さんと蒼兄の親父さん」
そう言うと家政夫が慌てて立ち上がった。
「あ、あの、三木くんの家に家政婦として住み込みで働かせてもらってる水沢徹っていいます!」
そう言って頭を下げた。
それを聞いた兄貴も蒼兄も頭を抱え始めた。なんでだ?
「ああ、君が?」
総一朗おじさんはそう言って、家政夫のもとに寄って行った。
「うちの息子のせいで大変な目に合わせたね。お詫びにも行けなくて申し訳なかった。もう平気なのかい?」
「はい。もう大丈夫です。こちらこそ、あの、勝手に出て行っただけですから」
「後ろから刺されてもおかしくなかったって聞いたよ。大事に至らずよかったよ」
「いえ……」
総一朗おじさんはそう言って、家政夫の頭をポンポンと撫でた。
「徹に触んないで」
「うん?なんか言ったかな?」
「別に」
「家政婦として一緒に暮らしてるんだっけ?どんな仕事をしてるのかな?」
「仕事って言ってもあんまり何にもしてないんですけど、料理とか洗濯とか掃除とか。あ、三木はそんなに部屋も汚さないので掃除もラクっていうか」
「身の回りの世話をしてくれてるんだね?」
「そ、そうでしょうか?」
総一朗おじさんは家政夫に興味があるみたいだった。ニコニコと家政夫の話を聞いている。それに対して蒼兄の表情が険しくなる……。
「せっかくだからこのワイン開けちゃおうか〜!」
どこかに行ってたと思ってたら父さんがワインを片手に戻ってきた。ゲッ!そのワインってこないだ貰ってきたビンテージのワインじゃん!
しかも母さんもニコニコでワイングラスなんか用意してる。父さんはソファにどっかり座って、総一朗おじさんを呼んだ。
「そうだ。何かツマミある?」
「チーズでいいかしら?」
「あー、もうちょっと食べ応えがあるのがいいかなあ。なんか小腹が空いたんだよねえ」
「そうだ水沢くん、なんか作ってくれないかな?」
「「「は?」」」
俺もついつられて言っちまった。総一朗おじさん、何言ってんだ!?
「いつも蒼也に作ってくれてるんだろう?」
「あ、はい。あんまりたいしたのは作れないですけど」
うーんと家政夫は首を傾げた。
「ワインに合うツマミかあ」
「別に作らなくてもいいよ。ただの我が儘なんだから」
「そうだぞ。母さん、生ハムとかあっただろ?それ食わせておけ」
家政夫はうんと頷くと、母さんのもとに行った。どうやら冷蔵庫の中の食材を使っていいか確認しているようだった。
蒼兄と兄貴はまたどうやら過保護スイッチが入ったらしい。すぐに二人とも立ち上がった。
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