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三人は泊まらずに帰ると言ってタクシーを呼んだ。母さんは残念がってた。けど、なんかいろいろ話すことがあると思うんだよな。だから俺は止めなかった。
タクシーに乗り込むときも何故か三人で後ろに乗っていた。ずいぶん窮屈だと思ったし、やっぱり家政夫は真ん中なのを見て苦笑してしまった。
蒼兄はさっさと乗り込んで、家政夫の腰に手を回していた。兄貴はそれなりにちゃんと挨拶していたけど、乗り込んだ後に家政夫の肩に手を回していた。家政夫は鬱陶しくないのかな?
タクシーを見送る。俺たちはなんだか名残惜しくてずっと眺めていた。
「いい人が来てくれた」
総一朗おじさんがポツリと言った。
「蒼也が他人に心を許すなんて思ってなかったから」
「まだ気にしてるのか?」
父さんの問いに総一朗おじさんは答えなかった。総一朗おじさんはずっと後悔してたのは知ってる。後妻のせいで息子が実家に寄り付かなくなってしまったとずっと嘆いていたからだ。総一朗おじさんが蒼兄が帰って来なくなって本当に寂しそうにしていた。
「まあ、これで蒼也くんが戻ってきてくれるといいな」
「ああ」
「うちの蓮も徹くんのおかげで仕事に身が入るようになったみたいだからな。ありがたい限りだ」
そうなんだ?ホントに忙しかったんだ?蒼兄に負けたくないってことなのかな?
「お互い悩みが解消しそうだな」
「確かに。じゃあとりあえず飲み直しますか!とっておき出しちゃおうかなー」
父さんは総一朗おじさんと肩を組んで家に入って行った。
さっきとっておき飲んだばっかじゃん。まさかまたビンテージワインを開ける気なの!?
母さんは俺の隣でずっとタクシーを見ていた。帰ってしまって少し寂しく思ってるのかもしれない。
「徹くんと連絡先交換しちゃったのよね!」
隣にいた母さんはしれっと言った。
「会いに行っちゃおうっと」
は?
家の中から母さんを呼ぶ声がした。母さんは軽い足取りで家の中へ入って行った。
俺はちょっとだけ家政夫に同情した。なんだか面倒に巻き込まれそうな気がする。
ま、そん時は相談に乗ってやらないこともない。
fin
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