番外編 初めてのおつかい

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「あの……俺がこんなこと言うのも変なんだけど」  徹さんはまだ口撃にあっている二木に突然そう言った。 「俺の母さんって過労死だったんだけど、やっぱり倒れる直前痩せてきてたんだよね。顔色悪かったし。俺はまだ高校生だったから何も出来なかったけど……だから、心配してるんなら、思いっきり心配してあげて欲しいっていうか。なんかあった後じゃ遅いから。俺は何もしてあげられなかったのをまだ思い出すんだ」  徹さんは噛み締めるように言った。その場がシンと静まる。 「あ、ごめん。変なこと言っちゃった?」  二木は首を横に振った。 「徹さ〜んっ!! 俺、俺〜!!」  変な声がすると思ったら浅井だった。なんだか目を真っ赤にさせて鼻を啜っている。 「徹さんのこと、すげえって思いました! 黒田課長がリスペクトする理由がわかったつーか、カンドーしましたっ!」  浅井はぐずぐずと鼻を啜りながら言った。黒田課長って徹さんリスペクトだったか?  けど、俺も浅井と同じでなんだか胸が熱くなったことは事実だ。 「徹さん! 私、全力で課長を支えます! 後悔したくないから!」  二木はいつになく気合いのこもった言葉を口にした。 「うん。頑張って! 俺に手伝えることがあったらなんでも言って」 「ありがとうございますっ!」  そんな二人を尻目に魔女たちはなんだかさっきからスマホに夢中だった。絶対どこかに連絡してるだろ?  徹さんは何かを思い出したみたいにボディバッグをゴソゴソとし出した。そして小さなメモ帳を取り出した。 「あんまり食欲ないなら、そういう時にでも食べられそうなレシピ書いておくね。三木も疲れ過ぎてたりするとあんまり食欲ないんだ」 「あ、ありがとうございます!」  徹さんはそういうとメモに書き始めた。 『良妻か!?』って呟きが聞こえた。それは僕も同意するよ。
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