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三木のストーカーは初めてではなかった。しかも犯人は分かっているらしい。
「僕の元彼女……いや、違うな。“自称“元彼女?」
聞けばそれなりに関係は持っていたらしい。いやいや、関係持ってたらそれはもう彼女じゃねえの!?
「え?ご飯食べて、寝ただけなのに?」
あー。いっぺん痛い目みた方がコイツのためじゃね?
「まあ、ちょっと夜中に来るだけなんだけどね。部屋から出なきゃ平気」
それはそれで怖いだろ!?っていうかこのマンションってオートロックじゃねえの!?
「三食風呂付き。住み込み家事全般。ボディガード代で月十万円でどうかな?」
十万円か。使うことはまずなさそうだから、ちょっとすれば敷金くらいは貯まりそうだ。食えて住めるだけありがたいか。
三木は俺の方を見てニコニコと笑っていた。
「あー。三木がそれでよかったら」
やった!三木は何故か小さくガッツポーズをした。
そんなに嬉しいことか?まあ、どうやら家事とかしなさそうだし女遊びも激しそうだし、一晩限りの女に彼女ヅラされて家事とかされるのも嫌なんだろ。
「じゃあ僕の相棒を紹介するね!」
相棒……?
三木がリビングから出て行くと、どこかのドアを開けたような音がした。
あっと短い声がした。リビングのドアから何やら毛玉が入って来たような……。
俺の足にぽすんと当たり、えっ?っと思っていたらソファの隣に座っていた。
「───猫?」
「もう勝手に行っちゃうんだから。紹介するね、僕の相棒。猫のミーシャ」
三木がそう言うと猫はまるで言葉が分かっているかのように、にゃーと鳴いた。
猫?見たこともないような猫だった。毛足が長くて、ふわふわ。白と薄茶色の毛に透き通った緑の瞳。
「サイベリアンって種類。普通の猫より大きいでしょ?」
俺は猫に釘付けだった。
なんて綺麗な瞳なんだろう。
「綺麗なミーシャ……、よろしくね」
俺がそう言うと、ミーシャは俺に身体を擦り寄せてきた。わああ、懐っこい。
「───もう仲良くなったんだ?妬けちゃうね」
三木はそう言って困ったように笑った。
俺が風呂に入っている間に三木は俺の部屋を用意してくれていた。俺は三木から古くなったスウェットの上下を貰った。微妙にデカいんだが。まあ貰ったもんだから文句はナシだ。
「ちょっと洗濯物と一緒だけど」
三木はベッドを寝れるようにしてくれた。
しかし……凄い部屋だな。ビニール袋に入った数多くの服。というかパンツとか靴下までクリーニングに出してるとか何なの!?
三木は明日仕事で出ていくけど好きにしてくれていいと言ってくれた。
『好きなだけ寝ときなよ』そう言ってくれた。ありがたい。ただ合鍵については明日作ってくるから家からは出ないでねって言われた。
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