144人が本棚に入れています
本棚に追加
/115ページ
ユージがニヤリと笑って言おうとしている言葉を、俺はビクビクしながら予想した。
できるものなら耳を塞いでしまいたかった。
俺が必死に否定しようとしているのに、他人から告げられたとたんにやっぱりそうなんじゃないかと期待してしまうから。
そしてまた、勝手に傷付いて落ち込む自分を想像して絶望的な気分になるのがイヤだった。
なのにユージは、本当に、まるで自分のことのように嬉しそうに言うのだ。
「運命だよ、運命。お前とその人は、そういう相手なんだ。切っても切れない何か……赤い糸で結ばれてんじゃね?」
「……キモい」
「は!?なんだよ修哉、冷めてんなぁ。でもさ、そういうの、良いなって思うぜ。って、新しく恋をしようと思ってるところ悪いけどさ」
新しく恋をしているつもりはないし、千隼とそうなりたいなんて思ってない。が、訂正するのも面倒で、俺はまた溜息を吐いて誤魔化した。
それからはお互いに掃除を再開して、いつもより遅く(掃除は当番制だ)に帰路についた。
ユージは知らないんだ。
もし本当にユキが運命の相手なら、それを決めた神様はやっぱり俺にだけとことん鬼畜だ。
俺のことなんて何一つ覚えてないくせに、ユキは、どこまでいってもユキだった。
最近千隼の部屋に入り浸っているのは、なにも心地良いからってだけじゃない。
アイツは何故か最近、ほとんど毎日俺の前に現れるのだ。俺にはもはや、アイツか何を考えているのか理解できない。
というか、俺にアイツを理解できたことなんてあっただろうか?
……無い、気がする。
最初のコメントを投稿しよう!