半年後、再会

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 3階立てのその店は一階が楽器屋で、新品から中古のありとあらゆる楽器を取り扱っていた。  エレキギターのとなりにバイオリンが並び、ピアノと電子ドラムが肩を並べているような雑多な店。2階には小さなホールがあって、時々何かのイベントが開催されるそうだ。  オレにはまったくもって未知の世界だ。  でも、どうせなら知らないものを知るのもいいかもしれない。  なんでかそんなことを思ったオレは、求人が出ているかも確認しないまま、店長と思しきおっさんにここで働けませんかと聞いていた。ほとんど無意識だった。  ってなわけで、オレは今、楽器屋でアルバイトしている。  クソニートじゃなくて、クソフリーターに昇格したのだ。  働き始めて二ヶ月もすると、店長やもう一人のアルバイトであるマサキとも打ち解けて、それなりに仕事が楽しくなってきていた。  ギターの弦は思ったよりも繊細。  バイオリンの弓は馬の尻尾の毛。  ピアノは定期的に調律しないとダメ。  そんなことをちょっとずつ知った。  だけど、オレにはこれっぽっちも、音楽の良さはわからない。2階のホールで開催されるイベントも、何のジャンルの音楽なのかもわからない。  心の琴線に触れるものがあるかもしれない。  店長はそう言っていたけれど、オレにとって音楽は、パチ屋のバカでかいBGMとかわらなかった。
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