半年後、再会

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 と、最初の三日は思っていた。  いざ新しくアパートを借りて、さあ仕事探すぞと意気込んでみたものの。  まず履歴書の書き方がわからなかった。  証明写真機で自分の顔の映った紙を手にした時、コイツ働く気あるか?と思った。こんな目つきと顔色が悪く、ピアスだらけで不健康そうなヤツ俺なら絶対に雇わない。  “職歴”という字面を見て、真っ当な職はムリだと悟った。  そこに“なし”と記入する28歳のヤバさを、なんとなく理解したのだ。  一枚目の履歴書を書き切る前に、俺はとりあえずパチでも行こうと家を出た。それから二週間、パチ屋と家の往復だけしていた。我ながらマジでクソニートだと思った。  最初の決意なんてカケラもなく、アレ?俺一体何してんだ?と思いつつも、パチ屋行って帰って寝てパチ屋行ってたわけだ。  そんな時、ふと目に留まったのがこのゲイバーの求人チラシだった。  俺が新天地として選んだ街は、ワンルームのアパートの家賃がタバコ50箱分の値段で借りられるような治安の悪い地域で、そう言った店が山ほどある通りがいくつも並んでいた。  如何わしさは十分で、蓋を開ければやっぱりなぁとも思ったけれど。結局俺にはコレしかできない。  ただの肉体労働だ。健全な肉体労働でも結果的に体を壊すことだってあるのだ。不健全でも自分にあった肉体労働を選ぶのは志望動機として妥当。  というわけで、所謂ウリというもので金を稼ぎ始めて約半年がたった。  今の俺は、自立しているという達成感でいっぱいで、仕事の後の酒が旨いのである。
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