半年後、再会

5/21
146人が本棚に入れています
本棚に追加
/115ページ
 だけど、やっぱり何か違うとつい考えてしまうことはやめられない。  恋も愛も知ってしまった体と心は、お前は何をやっているんだと俺を責めている。  オナニーを知ったばかりの中学生が、息をするのと同じくらいエロい妄想をしているのと変わらないくらいセックスばかりしていた頃を、もはや思い出すこともできない。  優しく抱かれても、レイプまがいの行為をされても、思い出すのはいつもユキのことばかりだ。  慣れきっている体は快楽を受け入れる。不特定多数とのセックスに今更なんの感慨もない。これは俺の金を稼ぐための方法で、気晴らしの一つでもあるから。  以前はそう自分に言い聞かせながらアニキの仕事を手伝う名目で何人かの外国人と寝た。あの時はユキの気持ちがわからなくて、罪悪感に負けた。  実を言うとその時の記憶が曖昧だ。気が付いたらトイレでユキに抱きしめられたまま寝ていたりもして、きっとストレスで吐く俺を介抱してくれていたんだなと、さらに罪悪感を感じた。  今だってあの時とほとんど同じような状況だけど、脅されたんじゃなくて俺の生活費がかかってる。  そばにいて欲しい人を、自分で切り離してきた。罪悪感など感じようはずもない。ストレスもない。  たとえそばにいたとしても、ユキは俺のことなんて、なにひとつ覚えていないのだから。  もしかして、と思わないでもなかった。  もしかして、ユキは実は双子で、顔も声も体型もそっくりな片割れがいて、俺と一緒に初冬の川に飛び込んだのはその片割れの方で、だから俺のことを知らないんだと妄想してみたりもした。  もちろんそんな都合の良い、作り話なら鼻で笑われるような設定はなかった。
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!