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ユキとのことが消えて無くなるわけじゃないけど、千隼の無邪気さに気持ちが落ち着いていくのも確かだ。
「修哉、熱いうちに食えよ!何飲む?ワインか、ウイスキーもあるけど、ダメだなぁ、安物ばかりだ」
「飲めれば何だって同じだ」
「ボンボンのクセに」
「元な!元!」
千隼がソファの前のローテーブルに、届いたピザとからのグラス、いくつかの酒のビンを置く。
俺が酒をグラスに注いでいる間に、千隼はゲーム機を起動してコントローラーを二つ用意した。大きなテレビに映る映像には、赤い帽子を被った配管工の姿があった。
「俺にコレをやれと?」
「客の要望には出来るだけ応えろって言われてるだろ」
「そうだった。店の元締めは千隼だった」
コントローラーとピザを手に、時々酒を飲みつつ、俺と千隼は夜中までガキみたいに遊んだ。テレビゲームってのを初めてやったけど、案外楽しくて夢中になった。
千隼はさすがと言うべきか、かなりやりこんでいるようで上手かった。ヤクザの息子と仲良くゲームなんて、我ながらどうかしてると思う。でも、たまにはこういうのも悪くない。
「はー、つっかれた」
程よく酔いが回り、そろそろゲームにも飽きてきた頃、時計を見ると深夜1時を過ぎていた。
目頭を押さえながらソファに転がると、千隼が真上から覗き込んでくる。
「気晴らしになったか?」
「多少はな」
「ならよかった。まだ飲む?」
「やめとく。これ以上酔っ払うと帰れないからな」
疲れと酔いでフワフワする頭をなんとか働かせて、そろそろ帰ろうかと腰を上げる、が。
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