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「修哉、大事なのは距離感だよ。どれだけ大切な人でも、どうにもならないことだってある。それでもそばにいたいなら、ちゃんと適正な距離を保たないと」
修哉が苦しいだけだよ、と千隼は言った。
その通りだ。俺は今日、身に染みて実感した。
今の俺を友達だと言うユキと、俺の知ってる、本当に逢いたいユキは同じじゃない。
それでもまた逢いたいと思ってしまった。
だったら、千隼の言うように距離を保つ必要がある。
友達としてそばにいられる距離を。
「千隼の方が俺より賢いな。千隼が俺とユキのことをどんだけ知ってるかわかんないし、個人情報を勝手に調べないで欲しいけど、今日だけはお前がいてくれて良かったよ」
至近距離の千隼の顔を見る。俺はちょっと気が抜けた顔をしていたと思う。
千隼の薄い唇と大きくてぱっちりした瞳は、俺より随分年下だけど男らしさは俺よりも上だ。単純に俺好みのイケメン。まあ、イケメンじゃなかったらここまで好き勝手させないけど。
「ねぇ、オレのフルコース試してみたくなった?」
「とか言って、断ったらオレは客だぞって言い出すんだろ」
「アハハ!これも距離感だよ。オレと修哉の距離感は客とキャスト。もしくは、雇用主と従業員。自分の店の商品のメンテナンスはオレの義務だ。特にお気に入りのキャストには手間を惜しまない。ゲームと同じ。気に入った作品はどれだけ時間を使ってもやり込む価値があるだろ?修哉にはその価値がある」
一晩にひとりしか相手にしなかったとしても、店でそれなりに人気があるのは、NGナシのプレイができるから。
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